« あ、かるい? | トップページ | ご当地御菓子なんだろか? »

2011年12月 8日 (木)

君は生き延びる事が出来るのか?

戦略の形成 上  ウィリアムソン・マーレー、マクレガー・ノックス、アルヴィン・バーンスタイン監修  中央公論新社

 サブタイトルが支配者、国家、戦争とあって、うーん、これは何の本かというと、失敗の歴史かなぁ(笑)笑い事ではないですけど、古代から今までの戦争史でもあるし、民族史でもあるし、政治史でもあるよーな…まぁ世界の興亡でしょーか?細かい事を言う前にこちらの本は、論文というか、大きさからして小論文と言った方がいいのかもしれないけど、一つの論文集のような構成。本書によると「1985年から86年にかけてアメリカ海軍大学で行われた戦略と政策に関する多くの有識者の公式および非公式の議論から生まれたものである」だそーで、はーへーほーの嵐(笑)でもって、書き手によるのか?(はたまた訳者によるのか?)文体というか、雰囲気が違うし、視点の違いに最初戸惑うかも?人によっては細かく書いて下さっている方もいるし、飛ばしに飛ばしている方もいるしで、この辺りの歴史(地理?戦史?)を知らないと厳しいものがあるよな(笑)えーと、細かい事をごちゃごちゃ言うより、本書はまず目次を見てもらった方が早いと思うので、最初に本書(戦略)についての前書きがあって、

 ペロポンネソス戦争におけるアテネの戦略…ドナルド・ケーガン
 戦士国家の戦略-ローマの対カルタゴ戦争…アルヴィン・H・バーンスタイン
 十四世紀から十七世紀にかけての中国の戦略…アーサー・ウォルドロン
 ハプスブルク家のスペインの戦略形成-フェリペ二世による「支配への賭け」…ジェフリー・パーカー
 世界戦略の起源-イギリス…ウィリアム・S・モルトビー
 栄光への模索-ルイ十四世統治時代の戦略形成…ジョン・A・リン
 列強国への胎動期間-アメリカ…ピーター・マスロウスキー
 国民国家の戦略的不確定性-プロイセン・ドイツ…ホルガー・H・ハーウィック
 疲弊した老大国-大英帝国の戦略と政策…ジョン・グーチ
 決定的影響力を行使する戦略-イタリア…ブライアン・R・サリヴァン

 どーよっとゆーラインナップってか(笑)百聞は一見にしかずでございます…

 アリス的に戦史…もしくは戦略史…まぁ王様というと准教授の生き方を彷彿とさせますが、准教授の場合は孤高ですので(笑)でまぁあの時歴史が動いたばりなんですけど、取り合えず本書を見る限りではどの施政者も皆読み間違えているのが、ジャスティスってか(笑)自分の立場(立ち居地?)も明確でないのに、ましてや相手の立場を読める人(国)はいないって事ですかねぇ…後は誰もが自分は正しいと思い込んでしまう病でしょーか(笑)

 本書的には一番丁寧に書かれてるよーに見受けられるペロポンネソス戦争のとこで、アテネのペリクレスは施政者としての愚かさでは一段と際立っているよーな…本人的にも民衆にも戦争前までは良き指導者だっただけに、この落差はちょっと気の毒になる程…敵のスパルタを読み間違えたのもあるけど、戦況が変わっていく中でも自分の物差しにこだわってしまったとこが敗因かと…これは死ぬまで、ついでに言うと死後も続いて戦争続行ですから、影響力のある政治家の愚行はただ一つでもその国(と民)にとっては致命傷というのが如実にあらわれていて非常に本当にあった怖い話かも…

 他には本書の中で一番短くて淡々とした論文だなぁと思わされたのが、疲弊した老大国のイギリスの章なんですが、ハプスブルク家のスペインの戦略形成のとこのフェリペ二世なんかは働けど働けど我が暮らし楽にならざりな感が漂っていて哀愁誘います…スペイン的にあっていたのか?世界的に間違っていたのか?それが問題だってかですが(笑)

 他にも中国の章で相変わらず孫子の兵法が出てくるのが、実に欧米か?ですかね(笑)ただ、「戦略の心理的・政治的側面に関していえば、『孫子』は今日もなおその意義を失っていない。しかし、この兵法書が書かれた当時においてすら、中国ではその直接的な有用性は失われつつあった」と多少は現実見てるとこでしょーか(笑)他にも「有史以来、中国の歴代の王朝は自らの王朝が統一国家であると主張していたが、実際には、全土に権力を及ぼすのは不可能であることを理解していた」とか、「儒教の古典が描く世界観は、中心部に文明化された地域があり、外部に向かうほど野蛮な周辺部が存在する統一的な世界である」とか、対戦についても「最終的には、知識人同士による政治闘争が明朝を滅亡に追い込んだ。満州族の脅威が顕著になったとき、知識人同士の論争のために明朝は有効な対策をとることができなかった」とか、中国の王朝が用いるアプローチの類型は、一拡大主義的アプローチ、二防御的なアプローチ、三軍事、文化、経済、外交すべてを使用してステップ地方の統治を目指すアプローチだそな…その後も「官僚による中央集権的な政治が中国を支配し続け、国家安全保障に関する政策が個人間の政略的な党派争いの激しい環境の中で形成された」そな…今も昔もちうごくって…

 えーと私的にはルイ十四世のとこが、一番響いたかなぁ?やっぱ太陽王ですよ、文句があるならベルサイユへいらっさいですよ(笑)結局、ブルボン王朝の栄光と挫折を一身に背負ったのが、ルイ十四世だったんですねぇ…戦争に明け暮れなかったら、ついでに国庫の事をもう少し念頭においていたら、後のフランス革命は回避できたかもなぁとか…対アメリカへの費用とか、マリーアントワネットの浪費なんかより、太陽王の使った財はドンダケェーのノリだしなぁ…栄光への渇望とゆーフランス病ですか?取り合えず彼は四つの大きな戦争をしているのですが、これも「ルイが絶対的な安全保障を追及したことが、いかに隣国に脅威を与えたかについて、彼はまったく理解していなかったし、また、彼の安全とはその性格上、隣国の安全を阻害することになることについても考えが及ばなかった」とな…空気読めの前に、相手の気持ちを汲む事なんて王様にはそんなの関係ねぇーってか(笑)

 他の論文もそれぞれに興味深いので、詳細は本書をドゾっただし、ハードカバーで上巻だけでも700ページ近くありますので、これまた読みでありますよぉ(笑)

 追記 戦略の形成 下  ウィリアムソン・マーレー、マクレガー・ノックス、アルヴィン・バーンスタイン 編著  中央公論新社

 そして下巻へなんですが、これまた下手な話より目次を見てもらった方が早いと思われますので、

 イデオロギーの戦争-ドイツ…ヴィルヘルム・ダイスト
 帝国の崩壊-イギリスの戦略…ウィリアムソン・マーレー
 無知の戦略?-アメリカ…エリオット・A・コーエン
 安全の幻想-フランス…ロバート・A・ダウティ
 階級闘争の戦略-ソヴィエト連邦…アール・F・ズィムケ
 イスラエルの戦略の進化-不安感の心理と絶対的安全保障の追求…マイケル・I・ハンデル
 核時代の戦略-アメリカ…コリン・S・グレイ
 おわりに-戦略形成における連続性と革命…マクレガー・ノックス

 どんどんと現代に近付くにつれてアレ感は…ともかく…一つ一つを追うと時代背景というか、変遷が分かる感じかなぁ?例えば「「軍人として」、「恥じずべき平和よりも名誉ある最期」を望むという声明」(@パウル・フォン・ヒンデンブルク元帥)もー時代がかっている科白にしか聞こえないけど、これ20世紀での発言だし…ルーデンドルフによると国内の敵が「ユダヤ人、ローマ=カトリック教会、そして社会主義者」だそーで、これがWWⅡ前…ドイツってば…

 また、「強力なリーダーシップは誤った戦略上の選択へと導いてしまう可能性がある」とか出てきて、結局時代に即したリーダーじゃなきゃお話にならないとゆー事か…後は人を見る目ですか?「チェンバレンもハリファックスもヒトラーやムッソリーニのような人物を理解することができなかった」って、それは理解できる人の方が少ないのでは…そして、政治家と官僚の仲というのはどちらも呉越同舟らしくって「ルーズヴェルトは、従来の官僚制度に対する不信から、既存の省庁に属さない、大統領直轄の戦争生産委員会などの新たな機関を大統領命令で設置し、与えられた権限を最大限に利用した」…米のネーミングはいつも凄ェ…

 更に米お素敵スなのは「アメリカ人は、戦争を一貫して聖戦と見なしており、戦争中には敵国の無条件降伏を戦争目的とする不合理なドクトリンを採用した」って…聖戦って伝統文化だったのか?英と米のものの見方の違いもなぁ…例えばジョージ・C・マーシャル陸軍大将について「アメリカの産業のいたるところに見られる組織の素晴らしい才能を有している。しかし、私はそれを天才的なものとは呼ばない」(@モラン卿/チャーチルの主治医)とゆー発言も出てくる訳で…ただ米的見方からすれば天才なんですよ(笑)

 さて、そんな米ですが核時代もしくは冷戦時代に突入して、「アメリカは、自国ほど透明性の高くない他の西洋民主主義諸国と比べて、もはや防衛の専門家といえるような存在にはなれないだろう。国家安全保障上の問題に対するアメリカ国民の無知さは深刻な影響を及ぼしている」とか…ちなみに米軍とは「戦略面においても作戦面においても、常に適切に監督されていたわけではない。その戦術面における技能はしばしば向上の余地を残していたし、その武器が常に最新鋭であったということもなかった。しかし、アメリカは常に兵站に精通していた」時代は物量ってか(笑)

 でもって米軍の流儀とは「アメリカ先住民に対して、当地では過去に類をみなかった「野蛮」な戦いを仕掛けたイギリス系アメリカ人開拓者たちに見られるように、1863年にウィリアム・テカムセ・シャーマン将軍が「奥様、戦争とは残酷なものです。残酷であればあるほど、早く決着がつくのです」」とな…でもって「アメリカ海軍の大佐が1954年に戦略空軍総司令部の戦争計画を指して、ソ連は一ニ時間後には煙が立ちこめ、放射能に汚染された廃墟となっているだろう」とな…更に「1991年にイラクに対して行われた空爆に見られるように、即座に決着をつけるために最大限の武力を行使するのがアメリカの流儀なのである」だそーですよ、奥さん(誰?)

 その他下巻も突っ込み所満載でどこから突っ込んでいーのか、途方にくれますが(笑)戦略の意味するところは年を取るごとに範囲が広がっているよーな?本書のまとめによると、「敵との抗争において統治者や国家が相手との相互関係のなかで合理的に手段と目的を調整する行為を指す」んだそーな…まぁ戦争とはとなるとやはり昔の人はえらかったではないけど、「政治家や将軍が行う最初の大規模かつ決定的な判断行為は、企図している戦争をこの関係において正しく認識し、状況の性質から見ればあり得ないものをその戦争に求めたり、あるいは作為しようとしないことである。これが、あらゆる戦略的問題のうちでもっとも重要かつ総合的なものである」(@クラウゼヴィッツ)…クラウゼヴィッツ先生は更に「戦争の結果は政治的合意によって固定化されるまでは絶対的ではない」と言ってたみたいです…かの孫子も「兵者国之大事、死生之道、存亡之道」となると…

 本書的に一番そーだろなぁと思ったのは、訳者後書の件…本書の編著者の一人からこれ訳して日本でも出さんかいと再三要請があったみたいなんですが、「これほど膨大な内容を理解するだけの知識を有し、かつ、高度の英語力を備えた翻訳担当者を集めることは容易ではなかったため、正直なところこの邦訳出版は無理であると考えていた」とな…まぁある意味究極のオタッキーだからなぁ…

 さてさて最後に日本についての記述のとこで一つだけ上げときます(笑)さる高名な日本研究者のお言葉だそーで「日本国家が衝突を回避するために必要なハンドルとブレーキを備えるようになったとは言い難い」だそーです(笑)全くもってご尤もなんですが、ちなみにそのハンドルとブレーキ備えた国ってどこにあるんですかぁー?教えてエライ人(笑)

 目次参照  目次 文系

|

« あ、かるい? | トップページ | ご当地御菓子なんだろか? »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

文系」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 君は生き延びる事が出来るのか?:

« あ、かるい? | トップページ | ご当地御菓子なんだろか? »