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2012年9月 5日 (水)

もっと、窒素を(笑)

大気を変える錬金術  トーマス・ヘイガー  みすず書房

 サブタイトルが、ハーバー、ボッシュと化学の世紀でして、この副題で分かる人は分かる話かな(笑)いやー、何というか巷でよく言う、ドイツの化学は世界一ぃーっとゆー雄叫びはあながち嘘でないというか…本書を見るとそれは至福と悪魔の囁きのよな…時代が悪かったという言い方は安易にしたくないんですが、でも間が悪いのは確かのよーな…いえ、当事者の方には笑いごとではないですけど…

 事の起こりは、ご飯が食べたいですかねぇ…19-20世紀にかけての問題は人口増加と食糧問題で、はっきり言えば人が増えれば人は飢えるんですよ…となると食糧増産体制に入るしかないんですけど、これまた作物を続けて作れば土地は疲弊していくだけなんですよ…で、結局、もっと肥料を、もっと固定窒素をの世界に突入し、その答えを出した人たちの話かな?と…

 詳細は本書をドゾ。壮大というか、壮絶なドラマです。男の野心と、仕事と、化学と経済が混然一体となって怒涛へ突き進んでいく感じでしょか?で、本書の主人公の一人はユダヤ系の化学者のハーバー、も一人が化学者というより工学者じゃないかの後のBASFの経営者となるボッシュなんですねぇ…どちらもノーベル賞受賞者だと…

 アリス的に、ハーバー、ボッシュ、どだろ?ハーバー、学者的には准教授の対極にいそーな感じかなぁ?当時のドイツ的にはメインストリームにいらっさった化学者という事になるし、正統派ということになるのかなぁ?どゆ事というとナチ政権下でのハーバーの辞任劇には「ドイツじゅうの新聞がトップニュースとして報じた」という位の重鎮、比較としてアインシュタインが出てくるのですがアインシュタインは「愛国者ではなく、変わり者の社会主義者の平和主義者であり、ドイツを捨ててアメリカに渡った大ほら吹きだった。アインシュタインは悪者として追放することができた」とな…対してハーバーの辞任はナチ政権的には大打撃だった模様…でもユダヤ排斥の道に進むと…

 ボッシュの方はハーバーの発見を量産タイプに持っていった人ですかねぇ…この工場拡大、会社も拡大、ひいては国を拡大していくというか、豊かな社会へ邁進していく姿はいっそ天晴れとしかいいよーがないよーな…鏡よ鏡、世界で一番働き者なのはだぁれ?な気がしないでもないよと…ゲルマン魂炸裂じゃね(笑)

 ハーバー・ボッシュ法によっての農業革命はともかく、化学の裏表、戦争と兵器、敗戦と社会、何というか国の為に一心不乱に進む姿は言葉がないと…世界が平和だったら、この二人の業績も陽の当たる所だけだったはずなのに…

 肥料を求めての最初の章の南米編は、チリとペルーは資源戦争にまで発展するし、それ以前にそれを求める欧米各国の狂想曲が何といっていいのか…一つを上げると、チンチャ諸島のグアノ(肥料)を求めて米では法律までできたとか…「アメリカ議会は1856年にグアノ島法を成立させた。それはアメリカ市民なら誰でも、世界のどこであろうと人のいないグアノの島の所有権を主張し、アメリカの領土にできるというものだった。この法律は事実上、すべてのアメリカ人に国家の名で土地を占拠する代理人役を命ずるものだ」とな…「住民のいない島、グアノのない島、他の国の領土であった島、古い地図にしか載っていない島、捕鯨船の酔っ払い船長から噂を聞いた島、存在すらしていない島。二,三十年の間に、アメリカはこの法律のもとで94の島や岩の領有権を主張したが、それらの多くは太平洋のハワイと、のちのアメリカ領ポリネシアとして知られるようになったサモアの間に散在していた。他はカリブ海にあった」って…でもって、グアノはなかったけど「多くは他の目的の役に立った。ミッドウェー島、ベーカー島、ジョンストン島、ハウランド島など、グアノ島法で米領になった環礁や小島は、第二次世界大戦時の飛行場となり戦闘準備地となったのだ」そーで、しかも「この法律のもとで領有権を主張した太平洋の八つの島は、いまでもアメリカに属している。グアノ島法はまだ有効なのだ」そーですよ、奥さん(誰?)それにしてもさすが正義の戦いに邁進している米様は違う(笑)ぶんどれぇーってか…

 さて、本書ではボッシュが石炭から石油を精製する件も出てきて、昨今の石油事情を思うとあると思いますなのか(笑)の気になるとこなんですけど、本書的にはやはりユダヤの問題に言及しない訳にいかないでしょ、って事で「19世紀後半、ドイツに住むユダヤ人の多くは、自分たちは幸運だと思っていた。他のほとんどの国では固く閉ざされていた数多くの扉が、ドイツでは彼らの前に開かれていたからだ。高度なドイツの大学に入学することも、そこで教えることもできた。ハーバーの父親のように、事業を始めて成功することもできた。法律、報道、医学、科学などを学び、開業することもできた。ドイツではこれらすべての分野で、ユダヤ人が優れた才能を発揮していた。たとえばドイツの化学者の20%がユダヤ人だった」とな…「ドイツ人の多くは、ドレフュス事件でひどい反ユダヤ思想が明らかになったフランスより、はるかにましだと思っていた」とゆー事で、ナチ以前はヨーロッパでユダヤ人に一番寛容だったのが、ドイツだったんですねぇ…それがあの結末とは、歴史の皮肉なんでしょか…

 えーと、本書のメインは窒素を巡る旅かなぁ…人工的に肥料が出来るよーになった今、結局、それは空と海に流れていっていると…硝酸塩の濃度はどこも上がっている模様…果たしてそれは?今も現在進行形なんですよ、と…興味のある方は本書をドゾ。

 目次参照  目次 理系

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