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2013年6月22日 (土)

ある職業でもなく、ある技術でもなく、高度な緊張を要する生活?

ローマ人の物語 16 パクス・ロマーナ 下  塩野七生  新潮社

 さて、アウグストゥスの晩年に迫ってみましたの紀元前5年、58才から亡くなるまでのお話なのですが、うーん、初っ端登場の17才の時から病弱な少年で、青年で、壮年で、老年なのに何故か長生きしてしまう人っているんですよね…しかも、アウグストゥス的には何も特別健康に気遣って過ごした訳ではないよーな…食べたい時に食べ、眠い時は眠りらしーんですけど言っている程実行は容易い話ではないよーな?何せ政治的には第一線でずっと出張っている訳ですから、しかも深謀遠慮を胸に秘めてですからねぇ…肉体的にはアレでも精神的には相当タフというか、打たれ強い人だったと思われ、かなぁ?ここまで読んで後継者指名をしたとしたらカエサルってやはり天才だったのか(笑)

 ある意味歴史上最高の二代目ではなかろーか?と思われですけど?たいていの事業は二代目の無能でぽしゃる事が多しですから(笑)ただ、このカエサルの有能な跡取りも、人の子であったというか、所詮秀才止まりであったというか、帝政を血の継承で繋げようと執着したところから、悲劇の誕生かもなぁ…天才と秀才の分かれ道は後継者に対して能力で選択するのではなく、血統というより自分の血を引く者にこだわるか?否かだなぁと納得の晩年です…これさえなけば、アウグストゥスの業績もたとえゲルマン対策で失策していたとしても曇りなかったと思われなんですが(笑)

 それはさておき、ローマ的には紀元前4年にユダヤのヘロデ王が死亡。ついでにアルメニアの王も戦死。どちらも親ローマ派だっただけにそれぞれの国の後継者問題が、ローマ的にも影響するというきな臭い時代に突入していく中、調停というか、新たな友好関係を築く為というか、外交使節としてアウグストゥスは孫で養子のガイウス・カエサル19才を派遣するのでありました…一応、顧問にマルクス・ロリウスを付けたけどね(笑)

 アリス的に、ローマ…今回は対外交渉的なとこはともかくアウグストゥスの家族騒動記はミステリ的には使えるのだろーか?いえ、不倫、不倫、また不倫の世界ですから(笑)たいていのミステリの動機って、財産(金)絡みか、愛情の縺れではなかろーか?その点、この愛憎というか、ザ・愛人祭り状態は恰好の動機ネタになるよーな(笑)

 政略結婚でも幸せだとほざくのはたいてい殿方に多いんだけど、まぁそれは時と場合によりけりで、これまたたいていのリアル・プリンセス物語は夫の浮気で終生悩む羽目に陥っている事多しな気がするが?気のせいか?まぁそれはともかく、アウグストゥスの娘のユリア、アウグストゥスの最初の妻スクリポニアとの間に出来た娘なんですが、このスクリポニアはポンペイウスの遺子の舅の娘だった人で、当時のアウグストゥスにとってはまさに政略結婚そのものの関係だったと…相手方と政治的関係が壊れればそれまでの関係という事でユリア誕生の頃に即離婚している位なんである(笑)

 その後、人妻略奪婚もどきをしたアウグストゥスだったんですけど、この二番目の妻リヴィアとの間には子供が出来なかったんですね…となれば一人娘のユリアは強力な外交カードというか、政略結婚の駒になると…かくしてユリア最初の夫は、アウグストゥスの姉オクタヴィアの息子、マルケルスとなった訳ですけど結婚後二年二十歳で死亡してしまうと…しかも子供出来てないし…

 ええ、血族への妄執に凝り固まったアウグストゥスは何でかんで自分の血を引く後継者をと、今度は親友というか、戦友というかのあのアグリッパをユリアの夫に据えるんですよ…勿論、現アグリッパの妻を離縁させて…ちなみにこの時、アグリッパ42才、ユリア18才ですから、もー政略結婚ですよねぇな世界ですけど、意外とこれは上手くいったらしー…ここでユリア三男二女をもうけた訳だから、アウグストゥスとししは狂喜乱舞の世界だったと…

 まぁここまではいい話だったのかもしれないが、ええ、アウグストゥス的には…ただ、病気知らずの頑健だったらしーアグリッパの方がお亡くなりになってしまうんですね…さて、アウグストゥスはどーしたか…次なる繁殖、いやもーこれ結婚というより血筋の為の繁殖とか交配の世界でしょと思うのは気のせいか?で、自分の血筋を残す事に血道を上げている父親は次なる結婚を娘に強いる訳ですね。それが妻リヴィアの連れ子ティベリウスだったとな…

 ちなみにティベリウスも現妻を離縁させられての再婚でござる、なんですね…ただ、アグリッパと違っていたのは、前妻ヴィプサーニアを愛していたとこですか?ある種一途な男だった模様…しかも貴族的なティベリウスと粗野なユリアでは所謂性格の不一致という事で、この31才と28才の夫婦生活は破局の道へと…家庭内別居となってそれもローマ中に知れる話となってしまったとな…これではアウグストゥスの望む子供いぱーい計画はどーなるんだぁー?な世界に突入(笑)

 しかも、ティベリウスはゲルマン戦略についてアウグストゥスと対立して、引退を決意、ロードス島に隠棲というか、学問に生きるわとローマを去ってしまうんですね…残された妻ユリアは「夫に捨てられた女」でしかなかったと…こんな事ならさっさと離婚してやれよ、と思うがかのユリウス二法がある手前、アウグストゥスの身内から離婚者を出す訳にはいかないという建て前があったとな…

 まぁここでアグリッパの遺子達の養育に私は生きると母の道を邁進していたなら、それはそれで平穏な生活が出来たと思われなんですが、ユリアという女性はどこまでも女でござるの人だった模様…アウグストゥス激怒の刑で、本人は島流しというかローマを追われその後の人生は島と山中で幽閉暮らしとなると…ちなみに不倫相手の殿方達(ええ、複数なんですよ、おぞーさん/笑)も一人は死刑、残りは追放刑になってしまうとな…

 結婚の破局が人生の破局に結びついた例となりそーな話しですけど、アウグストゥスの一族の醜聞はそれだけに済まないとこが何とも…ちなみにこの後、ユリアの三男アグリッパ・ポストゥムスをピアノーザ島(エルバ島の近くの島)に島流し、ユリアの娘のユリアも島流しにする羽目に…何とゆーか、ユリア系って大丈夫なんだろか?な世界か?ちなみに長男と次男は生後すぐにアウグストゥスの養子になっていたんだけど、こちらもアウグストゥスが後継者に期待していたけど、凡人に過ぎず双方若い時に亡くなっています…これの詳細は本書をドゾ。

 とゆー、身内にこだわるアウグストゥスですけど、その身内があまりにもたいした事がないのが何とも(笑)かくして、次代を背負えるのはリヴィアの連れ子の息子二人、ティベリウスとドゥルーススだけど、ドゥルーススはゲルマンで亡くなっていると…となるとアウグストゥスとは血のつながりが全くないティベリウスを後継者にするしかない状況に次第に進んでいく訳です…

 ちなみにティベリウスは名門貴族の出自という事になるし、何よりも非凡な才能の持ち主だったのですね…いつまでもロードス島に隠居している場合ではなくて、帰国してアウグストゥスと和解(笑)してから彼はゲルマン問題を処理する事になります。ちなみに知だけでなく戦士として、司令官としても有能だった模様…

 ただ、ここが血筋に血道なアウグストゥスだから、ティベリウスをアウグストゥスの養子にするのはともかく、ティベリウスは弟ドゥルーススの遺子ゲルマニクスを養子にする事に…ちなみにゲルマニクスの母親はアウグストゥスの姉オクタヴィアのアントニウスの間に出来た娘のアントニア…ええ、どこまでも己の一族の血の為なんですよ…

 いやもー本当は本書はこのゲルマン問題がメインのはずなんですけど、アウグストゥスの一族の妄執が凄すぎて他が霞んでいくよーな(笑)そんなに自分の血を残したいものだったんだろーか?有能な指揮官を得ないとシステムはスムーズに運行しないという事はアウグストゥスが一番骨身に染みていた事だと思うんだけど?

 ちなみにこのゲルマニクスにアグリッピーナ、ええアウグストゥスの娘ユリアの娘ですよ(笑)を嫁がせるんですね…アウグストゥス、執念で済まない交配の歴史ってか?これに振り回された一族の皆様の境地はいかに(笑)

 取りあえず帝政の礎を築いた人としてアウグストゥスは生き、死んでいったという事でしょーね…次代はティベリウスが継ぐ事になるのですが…共和制を終わらせて、帝政にシフトさせたという事で欧米の歴史学者の評価は頗る低いらしいアウグストゥスですが、東洋の島国の住人としては、何となく分かるというか、彼的には必要に迫られての話しだよなぁと…結局元老院体制は小田原評定と同じ結果になって国として機能しなくなるんですよ。それでも小さい国だった頃には多少の政治の遅延も許されたかもしれないけど、国が大きくなるにつれて遅れは致命傷になりかねないと…即断即決が求められるとな…

 となれば、権力を一つにする方法しかなく、それを皇帝としてまとめてしまえと走るのも一つの策だったとゆー事ですね…良し悪しは別にして…民主制を尊ぶ現代からすると、共和制から帝政というのは政治機構の停滞というか、後退にしか見えないかもですけど、ただ、これ今もさして変わらない気がするのは気のせい?だって、欧米の求めるトップって強いリーダー、強権を発動するタイプの人を一番に上げるじゃないですか?しかも何か施行する時はトップ一人の手腕みたいな話しにまとめるの好きだし(笑)あれも一つの帝政だよなぁと思うのは、これまた東洋の島国のローカルな目線って事ですかねぇ(笑)

 まぁ共和制にしても、帝政にしても、有能な、そして真っ当なリーダーじゃなきゃ回らないのは変わらないと思うんですけど(笑)

 目次参照  目次 文系

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