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2013年11月23日 (土)

くろすかうんたー?

打ちのめされるようなすごい本  米原万里  文芸春秋

 所謂一つの書評、解説、読書感想文、読書日記のまとめになるんだろーか?物凄い量が掲載されているんですけど…まぁそれはともかく、さすがだなぁと思うのは、著者がロシア語通訳だけあってロシア系の本が非常に多い事…一応日本で出版されているのだから日本語の本なんですけど、それでも露関係だけでもこんなに本出ていたのか?と正直おろろいた…勉強不足で済みません…

 で、これまた読んでいて微笑ましいのは、一つは犬猫好きという事もあって結構その手の本も出てくるんだけど、一番そのソレは米の本と露の本では温度差くっきりなとこじゃなかろーか?いや、何とゆーか世界をどの視点で見るか?は見えてしまいましたね、の世界か(笑)

 言葉についての豆知識も満載で、例えば世界での母語人口、日本語は10位だとか…まぁネットと英語礼賛で英語が上がっていくのだろーなぁの世界ですが…ちなみに「人文系の学問に携わる人々の言葉が、恐ろしく難解になっていく一方で、1日平均30語で事足りている若者たちの群れ」という日本語の中でも格差がくっきりしているのが何とも…

 分かり易い例としてはソルプ語の件がこれまた何とも…ドイツ語圏に囲まれたスラブ系の少数民族のソルプ人のソルプ語は平和になったら、経済的にも利便的も独語の方がメジャーじゃね?という事になって、ソルプ語だけ話す人は激減、ソルプ語と独語のバイリンガルが増え、やがて独語にシフトしていくだろうとな…で理由の一つが「近年になって2つのソルプ地域の中間地帯に不幸にも石炭が豊富な産地が発見されたため、数多くの他国者がこの地域に入り込み、ソルプを支えていたソルプ人だけの静かな村がなくなりつつある」って…国際結婚の場合もメジャーな言語メインになってしまうよーで子供はとなるし…で、共通語って何ですか?とか、独自の文化とか、消滅していく運命なのか…

 本的に指摘で行くならば翻訳本についても「手にするや早速目を走らせるのだが、なかなか内容が頭に入ってこなくてイライラする。翻訳調というだけならまだいい。文学書ではないのだから論旨が曖昧になるのは困る。これは翻訳者だけでなく編集者の責任だろう」とな…翻訳本も上手下手の格差が広がっていっているよーな気がするのは気のせいか?

 アリス的には、猫の本が結構紹介されているところかなぁ(笑)あとミステリーとホラーの趨勢について「(現実の事件が)合理的な推理が成り立たない。推理が成り立つための、ある程度緊密な人間関係が無い。推理小説にかわってホラーが全盛の出版界の事情は、世の趨勢を敏感に映しているのかもしれない」とな…SFが減ってファンタジーになり、ミステリが減ってホラーになっているし、ですかねぇ?

 後、作家と職業的なとこで「日本文藝家協会に加盟する3000名の会員の内、原稿料と印税だけで生活できる小説家は全体の5%程度、純文学に限定すると10人に満たない」(@島田雅彦)とな…そーだったのかぁーっ?とゆー事は夕陽丘で取りあえず独り暮らしを確保しているアリスってば、もしかして大成功者なのか?

 さて、著者のソレから露の話題は尽きない訳でそれを拾い読みするだけでも本書の価値はありそー…ゴルビーのグラスノチなんのそので実は「取材に入る直前、プーチン政権は大方の古文書館を閉鎖してしまっていた」とか、「二年ほど前にロシア公演を敢行したS座スタッフ一同が観劇ツアーに参じた日本からの善男善女もろとも契約相手とグルになった警察に監禁された上、パスポート&ビザを取り上げられて脅され、仕方なく有り金すべて巻き上げられたというのだ」とか、現代劇に対してロシアの「興行主は、直前まで「歌舞伎か文楽の方が無難だった」と気を揉む」とか、「ソ連邦の不思議は、各民族の独自性助長策を促進する一方で、弾圧と規制を反映していることであり、「各民族の友好」なる理想国家の表看板と中央集権的独裁という内実のあいだを振幅し続けていたのだろう」とか…

 露の詩人マヤコフスキーとかゴリキーの死の謎なんかもすざまじいものが…さすがスターリンと言うべきか?とにかく回りにいる人が皆、スターリンの手先とは…ゴリキーの場合私文書全て託した秘書がスパイ、助けを求めたアラゴン(仏の詩人)の妻もマヤコフスキーの恋人兼監視役だったスパイの妹等どこを向いても監視、検閲の世界か?この当時の露の芸術家の身辺は皆そんなもんだった模様…さすが、おそロシア様は違う…

 やはりというか「北方領土を返す気などさらさらなく、領土交渉を引き延ばして日本側からなるべく多くの資金援助を取ろうとしているだけだ、と身も蓋もないロシア側の本音や、プーチンのKGB体質を見抜いているのは、さすが」とか、「ソ連邦の憲法は戦争による領土拡張を否定しているのだから、日露戦争の戦利品として日本が得た樺太の南半分を、第二次大戦後にソ連が取り戻したのは妥当としても、一応対等な交渉の結果締結された1875年の樺太・千島交換条約で日本領となった千島全域ほソ連が占領したのは道理がない」とな、更に「本来は日本領だった樺太をむざむざロシアに取られてしまった」というのが歴史的必然らしー…間宮林蔵によって島である事を確認された事実を既に露側はシーボルトを通じて知っていたそな、ところがその資料を改竄編集して露側のものだとした模様…

 また、チェチェン問題のとこもエリツィンの失敗を「戦闘報道による国民の支持離れと判断した、KGBあがりのプーチン大統領は、「テロリストよりもジャーナリストを殲滅せよ」と公言し、極端な情報管制と報道陣弾圧を開始した」そー…いやもーおさすがとしか言いよーがないよーな(笑)他にも露関係の情報満載ですので詳細は本書をドゾ。

 対する米はどーなのか?というと、アフガンへの空爆について異をとなえたABC局の深夜番組のホストのビル・マヘールの場合「発言したとたんにホワイトハウスのフライシャー報道官に恫喝され、番組からいくつかのスポンサーが降り、マヘールの処遇が問題になった」とか、「市場原理主義は、減税をやって財政赤字はつくり出すけれど歳出を増やすことができない。例外は戦争。世界のどこかで小さな紛争を起こしては資金を集める戦略だろう」って…「「西部劇」はアメリカ大陸を「インディアン」たちから奪ったアメリカ人の側が一方的正義として描かれている、という点では「9.11」の戦争と同じ構図」で「虚構と現実の区別がつかないのは、おたくやゲームファンではなく、政治家やジャーナリスト」って…アメリカの正義って…

 まぁメディアというのでは「「新聞は友人を持つべきではない」という19世紀の新聞王ピュリツァーの戒めに反して、メガメディア傘下の報道機関が、親会社や系列会社に不利益なニュースを没にする事例は枚挙にいとまがない。NBCは、核兵器を製造する親会社GEに対する不買運動を報じず、CNNは親会社タイム・ワーナーの不当労働行為を報道しなかった」とな…アメリカの報道って……

 もしかして准教授の専門に被るのだろーかな「常習性の高い性犯罪の再犯防止のためにアメリカのいくつかの州では化学的去勢の刑罰が法制化されている」そな…「初犯では裁判長の判断で、再犯者は全員に性ホルモン抑制剤が注射される。外科手術による去勢を減刑と引き換えに司法取引を受け入れた受刑者の例もある。性犯罪者の顔写真その他のデータを地域住民に公表する「ミーガン法」を採用する州が増えてもいる」とな…性犯罪法は女性が制定した方がマシなんじゃなかろーか?とか…

 アイドル好きって米の発祥だったのか?「トスカニーニの神聖視はアメリカの発明だった」そーで、「スケールの大きい野心と、無邪気な確信の上に栄える画一的なメディアと、そして共通のアイドル」志向らしー…シナトラとかガルボとか「一時期に一人しかいないアイドル」万歳ってか(笑)一人のヒーローを拝む構図って「一神教的信仰をもつ国民のためにつくられた」ものだったのかぁーっ?

 他にも「そもそも計測不能な各国の文化を採点比較しようなんて審判役をやりたがるのは、イギリス人かアメリカ人みたいな野蛮人ぐらいだろう」って…著者本音ダダ漏れ…

 翻って我が国日本となると…外務省の書類について部外秘がついていたけど、「記されていたことは、世間一般に良く知られていることばかりで、これを機密と考えているのは外務省だけなのではないか」とか…「そもそもアメリカの属国にすぎない日本に外務省があるのは、あたかも独立国であるかのような錯覚を抱き続けるためのアクセサリーのようなものだから、職員も仕事そのものに使命感ややりがいを見出しにくいこともあろう」とか…「日本は実質的に官僚に管理されているから政府首脳が排除されても、あまり現状は変わらないものね。テロ甲斐の無い国ってのもいいのか悪いのか」って…貴方と貴方の合言葉ぁ霞ヶ関で会いましょー?

 著者外務に余程色々あるのか(笑)「外務官僚の本質的な傲慢さ、勘違いしたエリート意識、それを助長する法外な待遇、邦人の保護や安全に対する冷酷無比というか、完全な無関心と無責任を、在モスクワ大使館を例に具体的に紹介していて、かなり笑える」とか…本当に必要なんですか?なんて言っちゃあダメだ(笑)

 不良債権問題も「銀行経営者の責任も監督官庁のトップの責任も問わないまま公的資金を際限なく投入し続けようとする竹中も、その反対派も同じ穴の貉と見ぬく」とか…「護送船団方式でやってきた金融機関が破綻し、公的資金の投入が始まった。監督官庁たる大蔵省役人たちの責任も、その天下り先の金融機関トップの責任も解明しないまま、責任のないはずの国民に尻ぬぐいざせる。今ではすっかり定着したやり方だ」って…今なら大蔵省を経産省に、金融機関を電力会社に入れ替えても使えるかも?

 劣化ウラン弾、放射能問題で「ウランの半減期は45億年。砂嵐と食物連鎖によってイラク全土に核汚染が広がりつつある。小泉はそういうところへ自衛隊の若者たちを派遣したのだ」とな…ちなみに「湾岸戦争から帰ったアメリカ兵が癌や白血病にかかり、奇形児が産まれることが多く、湾岸戦争症候群と呼ばれている。湾岸戦争に従軍した60万米兵のうち45万が被爆しているとも言われている」そな…これこそマジか?の世界じゃね?

 それにしてもこんな事を本当に言った親がいるのか?で「お宅の子の自殺騒ぎでうちの子の受験に差し障りがあって迷惑している」って、いじめパネェ、お受験パネェ…よーするに日本は秀才の国になり下がってしまったんでつね…「秀才は模範解答を書こうとする。自由主義が流行れば自由主義の、軍国主義が流行れば軍国主義の模範解答を書くような人間が指導者になった」とか…それが知識人の正体だというのが何とも…

 かくて「実のある仕事はほとんどしないくせに横柄で住民に対するサービス精神はゼロ、自己保身と安定志向だけは頭抜けている、というお役人のイメージ」そのものに、知識人とは走っていくのか?

 その他、戦前の無産階級の女性達の悲惨な境遇の件とか、これも「性差別よりも階級差別の方がはるかに切実だったことがわかる」でして…格差社会とはとなり…殿方の方は「男はどうしてもイデオロギーに縛られつまらない抽象論に逃げ込んで生身の人間を見ようとしない傾向がある」とか(笑)床屋談義や居酒屋談義になるんですね、分かります(笑)

 北朝鮮問題のとこでは「西側から派遣された援助団体の人間たちの生態もおぞましい。朝鮮人を見下していて一般住民とは一切接触せず、ましてや地方に足を運ぶこともなく、ただただ平壌の隔離された外交官地区のオフィスでお気楽なミーティングと本国への報告書作りに明け暮れている」とは、これ如何に…

 ポーランドの件でも「体制転換の受益者が少数の資本家成り金の成功者と言論の自由を獲得した知識人だけであるとすれば、何のための体制転換だったのか」とか…中国の現代小説に「苦悩や絶望に同情し、強者にへりくだり弱者に残忍な人間性や権力腐敗の構造」を見るとか…「自分の狭い経験を一般化するのは愚かと知りつつ、やはり今まで接し得た中国人から判断するに、本音と建前の乖離が空恐ろしくなるほど大きく、損得勘定が余りにも露骨で過度に攻撃的で…」とか…デモでも、暴動でも、領海侵犯でもお金になればどこまでも?

 ロマ問題も「ユダヤ人がナチスによる民族浄化の犠牲となったことはよく知られているが、同じ収容所で当時の欧州ジプシー人口の三分の一が抹殺されたことは、ほんど忘れられ無視されている」とな…とな…

 いや何とゆーか、本当にタイトル通り、打ちのめされるわぁーの世界か…これでも本書のほんの一部ってとこが、どんだけ情報詰め込んでいるんだ本書という事になると思いまする…他にも色々色々ホントに色々ありまして、エビ満載ですので詳細は本書をドゾ。理屈じゃなくて、まずは読め、これに尽きるんじゃなかろーか?騙されたと思ってドゾ。

 で、最後に本書で個人的に一番打ちのめされたというか、文化が違うとおろろいたとこを一つ、仏の娼館についての本(「男を虜にする愛の法則」グリュデ)を読んで「下着について「ショーツ三枚は最低限必要と指導しているには笑ってしまった」とあるんですね…娼婦とパンツ、そーだったのかぁーっ?と驚くにはまだ早い…「そういえば以前、ルモンド紙によるフランス人の清潔度感覚に関する世論調査で「毎日パンツを取り替えますか」という質問に「はい」と答えたのは3.4%だった」とな…34%じゃないんですよ、3.4%なんですよっ…えええええぇーっ?下着って毎日履き替えるというか、着替えるものじゃなかったのか?毎日お風呂(シャワー)に入ったらその後は自然に新しい下着、これがデフォじゃなかったのか?パンピーもそーだったのか?仏ェ…仏国民、おそろしい子というより、さすがおフランス様は違うという事でFA?香水も必要かもしれないけど、まず洗濯した下着からじゃまいか?と思うのは、己が日本人だからなのか(笑)

 いやー世界は広い、本当に広い…とゆー訳で詳細は本書をドゾ。それしか言えねぇ(笑)

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