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2014年5月25日 (日)

ローン・ウルフか、ブラック・シープか、それが問題だ?

アラブに憑かれた男たち  トマス・ジョゼフ・アサド  法政大学出版局

 サブタイトルが、バートン、ブラント、ダウティでして、19世紀半ばから20世紀初頭にかけての英人から見たアラブ・イスラム世界というか、オリエント世界についての小論文という感じかなぁ?ある意味、当時の英国社会から一つ抜けてる反逆児なのか?風雲児なのか?まぁ文系的に見た方がいいのか?リチャード・バートンは英の外交官でもあったけど、あの千夜一夜物語、アラビアン・ナイトの翻訳者として知らない人はいないだろーなお人ですし、その他著作はいぱーい…ウィルフリド・スコーエン・ブラントは外交官から始まった人ですけど、詩人が本職と見ていいんでしょーか?なのでこれまた著作あり〼の世界で、チャールズ・モンタギュー・ダウティの場合はアラビア・デセルタこれ一冊で、全てが語れる世界か?ちなみにあのアラビアのロレンスも絶賛してます(笑)

 とにかく、こーゆー人達が当時の英社会から出たとこが、大英帝国の底力じゃまいか?ですかねぇ…それぞれにアラブに対するニュアンスが違うとこもまた何とも?トーシロが見る分には、バートンのソレはIで、ブラントのソレはYOU、ダウティのソレはHE/HERかなぁ?何とゆーかバートンはアラブに同化してるというか、一心同体な感じだし、ブラントのアラブは恋に恋しての世界か?二人の為に世界はあるのぉぉぉぉな雰囲気満載だし(笑)ダウティのそれは欧米人が欧米以外の地域に行って、ここがおかしい〇〇な告発でしょかねぇ(笑)元祖上から目線乙の世界ってか?このいつもマジョリティの欧米人がマイノリティの立場になった時の反発って、いつもながら思うが並じゃないよな?異文化間コミュニケーションって難しい…

 そーゆー三者三様のアラブ観を見てみよーが本書の構成みたいです。ちなみに著者は米生まれのアラブ系米国人、英文学の教授だとか…しかも原書の発行時は1964年頃みたいで、半世紀前の本なんですねぇ…何が凄いって今でも古びていないとこでしょか?ただ、原書がそーなのか、翻訳がそーなのか、滑らかなというより硬い文な感じがもったいないかなぁとは思ったが…

 ちなみに著者的な見方でいくと「バートンのアラブ観はあまりにもグロテスクであり、ブラントの場合は美化しすぎ、情緒的すぎ、ダウティではあまりに純粋、単純、そしてきびしすぎた」とな…更に三者共「英国人はそのひと自体によりアラブにまさるというもって生まれた思いに繋がっていて、そこから支配層、立場が優雅なゆえの謙議、極端な愛国意識について各人それぞれの態様が生まれた」となるそーなんですよ、奥さん(誰?)ある意味、これ程、大英帝国的な、あまりにも大英帝国的な話もないとなるんだろぉか(笑)

 アリス的にアラブ…うーん…モロッコ水晶か?ペルシャ猫か?ただ、これ当時の英人が見たアラブだからなぁ…それもこの三人かなりかっ飛んでいらっさる部類の人達じゃまいか?だし…ある意味、英国紳士の神髄を見たぁーっ(笑)の世界かもしれない…この辺りの人物評というか、キャラの厚み、幅について同じ自国民のウルフ先生に聞いてみよーってか(笑)

 他にアリス的なとこというとバートンの場合、大学時代の趣味が「飲み会とボクシング」だったよーで…飲み会はともかく、ボクシング…准教授と被るのか?それにしてもこの時代の英人という事でホームズとも被るのだろか?で、もしかして19世紀後半、英でボクシング流行もあったのだろか?取りあえず、バートンの場合は暴力沙汰については喧嘩上等の住人だったよーで、だから何か事がある度に決闘もじさないタイプ…「アメリカの大平原でインディアンと対決し、アラブに襲われて打ちのめされ、ソマリア人からは重傷を負わされている。紅海では難破の危機に瀕したし、東アフリカ、中央アフリカでは病苦と不断の危機に耐えた」って、常に危険と対峙していないと生きていけない人だったんだろか?バートンの気質としては「それは感受性と、男性的精力の横溢あるいは精悍さとの相互作用である」だそで…取りあえず前に進んで、えばりんぼな世界ですかねぇ…

 そのバートンの生涯作品で傑出している三点が「旅行文献分野への傑出した寄与としての「巡礼記」。彼のもっとも重要な翻訳、かつ「人類学的」情報の宝庫としての「ナイト」。そして創作の試みとして最上のもの、またおそらくはもっとも自己表白的なものとしての長詩「カシーダ」」らしー…

 まぁともかく、バートンの場合はアラブにあってアラブ人として通用したよーな人だったよーで、しかも「アラビア語以外にも東方の諸言語のほとんどと、それぞれの多岐にわたる方言の多くに通じていた」そな…まぁバートンは「最高クラスのアラピストだったことを示している」とな…

 取りあえずアラブ肯定派だったのは確かな模様…というのはも「「アラブのほとんど絶対的な自立心」を北米インディアンのそれと対比し、到達度の高い点でアラブが民族としてより高貴であると結論づけて、大いに称揚している」そな…ついでに言うと「アラブが「重んずるのは男らしいやり方で、現代のわれわれの政府による、実は何よりも残酷な、ヒステリックで、博愛的、疑似人道主義的なそれではない」と確信」していたそーな…よーするにバートンにとっては英社会よりアラブ社会の男社会なとこがお気にめした模様…じゃあアラブ至上主義かというと「英国人としての優越感が含まれていて、それは個人的な優越意識となって溢れ出た」という、どこまで上から目線乙だったよーで…そゆ意味では「バートンが、その帝国主義的傾向にもかかわらず英国の官僚で充分に報われなかったのは皮肉である」となるのか(笑)

 どちらかというと肉食男子というか、肉体派というか、マッチョ思考の最たるもののバートンと比較するとブラントの方は室内芸術派が風景に恋するがごとくのタイプだろか?「彼は誇り高く、高慢で、人嫌いだった。そして同情心が強く、愛想がよかった。生涯を通じて動物へのやさしい気遣いと馬に対する強い好みを持ち続け、自然の有する唯一の欠陥、それは人間だということがあった」とな…よーはお坊ちゃまのアラブ趣味と言った感じか?「彼がアラビアを西洋文明に汚されていないところと考え、砂漠をその防御の殻のようなものとみなした」ふつくしい話じゃまいか(笑)

 また敬虔なカトリック教徒も内在していて「在英の自分の贖罪司祭に「種の起源」や「試論と批評」といったものを読む許可を求める手紙を出したと伝えている」って…進化論と宗教、とるならどっち?ってか…

 で、まぁ東方見聞録じゃないけど旅に出るぅーで、「旅行する者は誰しもそうだろうが、こうした人たちが律儀で善良なこと、彼らの政府の悪辣なことを身にしみて知らされた」とか、「西洋人に対して限度を超えた忍従を強いられている東方の人たち」とかを目撃するに至る訳ですね…インドにしてもエジプト等の支配地にしても大英帝国の世界戦略は「わが国が犯した不正が世界中に知れわたるように」とか「長い間われわれが誇りとしてきた英国の正義が空虚で無意味な言葉となり下がったことをすべてのエジプト人が、また全東方世界が理解できるように」とかと己が国に正義とは何か?と突きつけるとこが、実に詩人かなぁ?政財界のお人ではないよね、だよね…こゆ人が不正を正す為に政治家目指しても失敗するというより、理解されないのはいつの世も同じってか?かくて「英国は「エリザベス女王時代、イギリス諸島のほかには一片の領土もなかったあの<ゆったりとした日々>のほうが、いまよりはよっぽと仕合せで、敬意も払われており、かぎりなくまともだった」となるって言いきっているし…かくて「愛国心のもう一つの型は、「商業帝国主義」、つまり関心といえば「市場を獲得し維持する」ことしかない愛国者をもつそれである」って拝金主義でないアングロ・サクソンもいたのか?これは当時的にも、今的にも英国としては受け入れられない思想だよなぁ(笑)

 という欧米の文明の限界からの脱出、もしくは救いにアラブを見た人かもしれないけど、それも「「伝承」が動物を慈しむことを命じているとムハンマド・アブドゥフから教えられて喜んだが、この学識深いモスレムがブラント自身のカトリック教会に対するのとおなじく、もはやイスラムの信を失い、二人とも「人類にとっての明るい未来」を予見できないでいるのを知る」で、晩年のブラントは内向きになってしまうのだろか?ですかねぇ…

 そしてダウティ登場ですが、こちらはもー一英国人、パンピーな英国人がアラブに行くとどーなるの異文化間コミュニケーションの最たるものかなぁ?英国人的には一番分かる分かるの世界じゃね?よーするにアラビア・デセルタは元祖ここがおかしいよアラブ人の世界がずらぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっと並んでいる話なんですね…ダウティ、アラビア体験記とでも言うか?

 世界中どこであろーと自分の生まれ育った所以外のとこにいけば、摩擦がない訳がない訳で(笑)それに一々つっかかっていけば、ついでに自分が正しいと主張するのは、如何なものか?とゆー話か?幾ら英国人とはいえ、アラブにおいてはマイノリティなんですよ、おぞーさん…でも、そこにあってもマジョリティとして振る舞い、思考するとこが実に欧米か?(死語?)なんですかねぇ?

 ある意味それは凄い事でもある訳でして…例えば「女の運命は、ここでは不平等な内妻身分に甘んずることであり、このきびしい人生で倦み疲れた隷属をつづけること」だそで、「女は父の支配下から夫の支配下に移る。彼女には結婚に際して選択の自由はなく、結婚後は夫の意のままに無視されかねない。唯一の救いは、家庭内で自分の居場所を確保するために息子を多く生むことだ。「したがって、結婚して長く仕合せな生涯を送れる遊牧民の妻など、ほとんどいない!」」という今に通じる人権問題についても踏み込んでいらっさると…更に「遊牧民でも平俗な部類は人の食べるものを奪うことに良心の咎めをろくに、あるいはまったく感じない。彼らはそれをざらにあること、ハイル・アッラーと思っている」って…

 かよーにアラブの負の部分を曝す事になれば、旅行記だか、紀行記だか、日常記だか、体験記だかは、ほのぼのとしたものは「全体のごく一部にすぎない」となり、大半は「ダウティが彼らと親密なことは一度もなく、彼らのほうでもそうである」となり「ほとんどすべての場合に不和は絆より強力で、大抵のところ彼がおかれているのは敵のただなかなのだ」となる模様…「彼らが見せる親愛の情のうしろにすら、ふつうは威嚇がひそんでいる」と…ダウティのとってのアラブとは憧れでもよそ行きでもなくて、あるがままの世界だったんですねぇ…

 宗教的なものが前面に出ている訳ではないのですけど、それでもアラブに行くキリスト教徒の扱いとは、特に土地の子供達にとっては「たしなめる大人もいないのを幸いに剣や棍棒を持って彼を取り囲み、「やい、ナスラーニー!やい、ナスラーニー!」とあざけり、下非た歌をそれに合った身ぶりとともにはやし立てる」と更に「体罰で報復されることがあり、顎鬚をむしられ、平手打ちを受け、唾を吐きかけられた」狂信的な住民からは「彼を即刻死に処すると断言した」と散々な目に…同じアブラハムから始まった宗教も共存するのは大変厳しい模様…ちなみにナスラーニーとはナザレ人、キリスト教徒の事を指す言葉みたいです…まぁその他詳細は本書をドゾですけど、「イスラムという軽信の絆は、神の恩寵をモスレムにのみ注ごうとする魂の高揚である。その魂の腐った腸からほかの世界全般に向かって出る害毒だ」なんて表現も出てくるから…ダウティのアラブ観もまたアレか…

 ダウティの宗教観、愛国心は善良な人の手の内にある分にはオケだけど「嫉妬心の強い、恥すべき質の人間のなかで堕落したときの、身勝手と狂信という毒気を含んだ息のようなもの-それが彼らのなかでは、宗教的愛国心に満ちた精神の富むべき成果として通用する-は、ぜひともやめてもらわねばならない」と警告していまする。「行き過ぎると、両者とも非常な禍を溢れされる泉となる」って…

 かくてダウティの話はトーンが違ってくるので詳細は本書をドゾ。三者と母国は「ダウティは自分の民族に忠実だった。ブラントは英国という国土を愛していた。そしてバートンは大英帝国を誇りにしていた」とゆーどこまでも英国人というスタンスですかねぇ…まさに英から見たアラブですよね…尤もバートン的には「強者にとりては全地これ祖国なり」もあると思いますの世界の住人だし(笑)「アジア人はアジア人に統治されるべしなとというその信念は、「本格的自由貿易主義者のたわごと」だというわけだ」とな…本当に大英帝国に栄光あれの人だったんだなぁ…

 ちなみにバートン、米に対してもアレでして「合衆国における読み書き能力の広範な普及、つまり暗愚、文盲の旧世界に対する自負自慢のためには都合のいいお題目は、懇篤を欠き、とげとげしい個人主義が幅をきかす国柄の不愉快な欠陥的側面を際だたせるのに役立ったのみである」と容赦なし、ブラントになると「英国の軍隊が南アフリカでキチナーの命令で農地を焼き払い、「女王と上下両院と主教たちが、公然と神に感謝しつつその仕事を進める費用の支出に賛成票を投じている間に」、合衆国は「年に五千万ドルを費やしてフィリピン人を殺戮し、ベルギー国王は彼の全資産をコンゴに投資し、そこで自分の懐を肥やすために黒人に残虐をはたらいている。」「そして全ヨーロッパの国々は」、「中国でおなじようなこの世の地獄をつくりだし、占領した都市ではまるで中世とかわらぬ途方もない虐殺、略奪、強姦をおこなって」いたとする。」と、欧米全てめったぎりです…「そこに生まれたことをおおいに誇りに思っていたすばらしい十九世紀」へようこそってか?

 いやもー19世紀欧米社会が如何にアレだったか?というのを彼らは一人一人アラブという鏡を用いて見せたよーな?ある意味「文明は毒薬なり」を如実に見た人達だったのかも…感受性が高いってのも、生き辛いってか?でもその他大勢と違って、後の世に何がしは残るのよね、多分(笑)

 そんな訳で他にもエピ満載ですので詳細は本書をドゾ。

 目次参照  目次 文系

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