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2015年12月18日 (金)

神がそれを望んでおられる…

絵で見る十字軍物語  塩野七生 絵・ギュスターヴ・ドレ  新潮社

 どゆ本というと、十字軍の本としか言いよーがないよーな…でも本書はどちらかというと絵がメインのお話です。という事なるのだろーか?さて、歴史音痴なので、だいたいにして十字軍というのは名前だけは知っているのノリに近いもので、これが、何時?とか、誰?とか、どこ?とか、これは多分中近東なんだろなというおぼろげな認識はある…して、その内容はというか内訳はみたいなのも今一つピンときていないんですよねぇ…どこぞの大統領が十字軍だの枢軸だの歴史用語振り回しているけれど、果たしてそれは?となると、やはりこれはどっぷり世界史の世界なんだなぁと…

 で、本書の元ネタは「十字軍の歴史」(@フランソワ・ミショー/仏・歴史作家)の挿絵らすぃ…挿絵といいながらもそれは百葉を超える枚数という事で、これはこれで独立してイラスト集としても成り立つんじゃまいか?で、今回はその絵に、その絵の舞台となった地域を示す地図と著者のミニ解説がついて見開き二ページという構成になっている模様…

 して、その絵なんですが、原画はペン画だそーで、実に細かい、またふつくしい絵なんでございます。その絵は「イスラム教徒が見たとしても、その人がよほどの狂信の徒でないかぎりは、不快感をいだかないであろうと思っている」出来栄えなんですよ、奥さん(誰?)

 ちなみに元ネタのミショーによる文章も200年前のキリスト教徒にしてみれば「驚くほどバランスのとれた叙述で一貫している。啓蒙主義にフランス革命という、思想的にも社会上でも激動の時代に生きた人であるためか、宗教や民族に対する既成概念に捕われる度合いが少ない。要するに、相当な程度には客観的な叙述、と言ってよい」になるそーで、「これより二百年の後の現代に多い、イスラム教徒を刺激しないことばかりを配慮して書かれた十字軍の歴史書に比べれば、ミショーの執筆態度のほうがよほど正直である」って…正直者乙ってか(笑)

 てな訳で、文の挿絵か、挿絵の文か、でその対決の軍配は如何に如何に(笑)

 アリス的に十字軍、中世ヨーロッパって…国名シリーズでいくと欧州系って、スウェーデン館、英国庭園、スイス時計となる訳ですが、中世的にどよ?というと、どーなんでしよーねぇ?十字軍的となるとリチャード獅子心王で、英になるんだろーか?ウルフ先生?

 さて、十字軍以前の話となれば、エルサレムはキリスト教、イスラム教、ユダヤ教の聖地なのは変わりなしで、その頃からも聖地巡礼はあった模様…でもって、当時ほぼイスラム圏になっていたけど、キリスト教徒が巡礼に行くあると思いますだったよーで、現地でもイスラム教徒によるキリスト教徒に助力するもあったみたいなんですね…まっ今ならおもてなしですか(笑)旅人に優しい人もそりゃいる訳で…

 が、逆にまた旅に出ればトラブルもまた付き物で、これもそれも現地のイスラム教徒があかんのじゃーと短絡的に受け止める人が当時もいたとみえて、それを帰国してから触れ回る巡礼者の隠者(宗教家)もいたりして…「聖地でのキリスト教徒に対する迫害をやめさせるには、聖地そのものを征服するしかない、と言って」って…で、これに「キリスト教の影響力を高めるのに熱心だったローマ教会は、この彼を百パーセント活用した」訳で、聖地奪回、十字軍の幕開けとなる訳ですね、分かります…

 で、まさにキャンペーンなんだよ、という事で十字軍フィーバーきたこれになるとな…ちなみにこれに与しなかったのは、「イベリア半島内でイスラム教徒と戦争中だったスペイン人と、以前からイスラム世界と交易していた、イタリアの海洋都市国家だけであった」というから、もーヨーロッパ大陸中がこのビックウェーブにどっかり浸かっていた模様…宗教的熱狂って半端ないのはどこも同じってか?

 かくて「十字架に誓うことで十字軍に参加することになったキリスト教徒にとっては、イスラム教徒が相手ならばすべてが「聖戦」になる」って…聖戦というとどーもイスラムのイメージでしたけど、キリスト教的にもあると思いますだったのか?聖戦の歴史も半端ない…

 こーやって、第一次十字軍から第七次まで500年間も単発的とはいえ戦争状態だったって…何だかなぁ…細かい戦闘についての詳細は本書をドゾ。十字軍の進軍というのは、現地の城塞都市の攻防戦みたいで、欧州からバルカン半島を下って中東入りでしょか?目指すはエルサレムでその途中にある都市は皆、戦えの世界だったよーで…そして陥落後は住民皆殺しみたいなノリだったよー…「イスラム教徒を殺しその手から聖地を奪還するのが神の望まれること、と言って送り出したのはローマの法王である。十字軍兵士も巡礼者も、"安心して"殺しまくったにちがいない」って、ホンマでっかぁーっ?一神教的にそれがジャスティスなんですか?そーですか…

 尤も、第一次十字軍の頃は現地のイスラム教徒の皆様はこれが宗教戦争とは気が付いていらっさらなかった模様…よーするに普通の戦争(という言い方も何だが/笑)だと認識してたらすぃ…

 さて、戦いなので双方捕虜になったりしているのですが、イスラム側はといえば「命を助けて自由にしてやる」だそな…ただし「身代金を払ったうえの話なのである」とな…故に金にならないとなれば「奴隷に売られたのである」になるそーな…ちなみに十字軍の方は「イスラム教徒と見れば見境なしに殺した」そで…十字軍の実態って…

 ちなみにイスラム側のサラディンの場合、テンプル騎士団の兵士の場合はその捕虜を自分で買ってでも一人残らず殺したそな…でもってキリスト教側のリチャード獅子心王の場合は、「命は助けるとの約束を破って、降伏してきたイスラムの兵士たちを殺させる」とな…「これ以降はイスラム側も、キリスト教徒からこの一事を学んだのであった」となる訳で…成程、中東で二枚舌の英ってこの頃からの伝統芸能だったのか…

 またキリスト教徒内でも、経路途中のビザンチン帝国の場合「ビザンチン帝国自体は、強力な軍事力を持っていない。それで、十字軍を利用してイスラム側に奪われていた領土を回復しようと考えていたのだが、その考えは、第一次十字軍が自分たちの国を建設してしまったために反故となった」そな…漁夫の利を得よーとしてもそーは問屋がおろさなかったらすぃ(笑)で、ビザンチン帝国は何をしたか?と言えば、後の十字軍達に道案内役をいいかげんで済ます事に…かくて十字軍の皆様は迷子になるわ、ゲリラに合うわで散々な目に…

 そもそも「ビザンチン帝国はギリシア人の国だが、そのギリシア人は、ヨーロッパ人の別称であるラテン人を、野蛮人だとして嫌っていた。そのラテン人のカトリック教会と合同するなど真っ平、というわけだ」って、ホンマでっかぁーっ?でも「ラテン人のほうは、ギリシア人を軽蔑していた。イスラム教に押し寄せられても自分たちでは反抗もせず、西欧に助けを求めるしかできないではないか、と」って、これまたホンマでっかーっ?というか、広義で言えば同じキリスト教徒とはいえ、とても一枚岩とは言えない模様…しかもビザンチン側は「イスラム側に密かに十字軍側の情報を渡していることは、西欧では知られた事実になっていた」って…「13世紀初期というこの時期、西欧のカトリック教徒たちがビザンチンのギリシア正教に感じていた思いは、現代で考えるよりはずっと複雑であったのだった」とゆーのは、今現代にしてもワロエナイになるんですけど、欧州の歴史半端ない…

 何か地中海東側は今日も燃えているか?の世界が展開していますが、この中で唯一異色な十字軍、人物としては第六次十字軍、フリードリッヒ二世になるのだろーか?でも、これキリスト教的感覚では認められんねぇーになる模様…何せどちらの側にも一人の血も流さずに中東和平を実現したお人なんですが、当時的常識ではでっとおああらいぶやねんで、敵はお互いに殲滅あるのみというか、正しい方だけが勝つんじゃボケの世界だったらすぃ…詳細は本書をドゾですが、いやもー一神教パネェとしか言えねぇ…

 この後の第七次十字軍、総大将が捕虜になったり、中東におけるキリスト教側の拠点が全てなくなったりと、戦時的には大失敗だと思われなんですが、この仏王の方は後にキリスト教的には聖人に列せられ、先のフリードリッヒ二世の方はなかった事にされているというだけでも当時のキリスト教の感覚が分かろうというものか…まぁ何にせよ、キリスト教側もイスラム教側も、かくて因縁あさからぬ関係にドンドン進む事になるんだなぁ…そして現代に至るってか?

 まぁ長い中世史ですので詳細は本書をドゾですが、とても一口で言えるお話じゃないと思われでして…で、その他、豆知識も本書は満載なので、そちらも合わせてドゾかなぁ?例えば、アンティオキア、ローマ帝国時代の三代都市が、ローマとアレキサンドリアとアンティオキアとは知らなんだ…アンティオキアってどこ?というと今でいうシリアの都市なんですよ、奥さん(誰?)シリアってそんなに大きな都市があるんだなぁ…

 それと、バルトロメオ、所謂聖なる槍ですか、の発端も十字軍からなのか…ちなみにかの「ヒットラーも欲しがった」聖遺物という事になるらすぃ…も一つホーと思わされたのが聖ジョルジュのとこ…「後に大英帝国の守護聖人になる」って、そーだったのか?ウルフ先生?「もともとは中近東の出身で、人々を苦しめていた龍を殺したことから戦闘の守護聖人とされている」って…戦闘に守護聖人、さすが、大英帝国サマは違う…

 他にもたくさんたくさんたくさんエピ満載、そして絵画もふつくしいので、興味のある方は是非本書をドゾ。これは本当に見なきゃの本だよなぁ…視覚に訴える本でございます。

 目次参照  目次 文化・芸術

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